休日の午後。
リビングで、ぼんやりコーヒーを飲んでいた。
ふと、目の前にいる妻ちゃんを見ながら、思ったことがそのまま口から出た。
僕「今さら気づいたけど、あなたって独特な雰囲気まとってるよね?」
僕としては、けっこういいことを言ったつもりだった。
褒め寄りの観察。
一緒に暮らして二十数年。
だいたいのことは分かっているつもりだったけど、
こういう小さなズレは、まだ新しく見つかる。
それが、なんだか少し嬉しかった。
でも、返ってきたのはこれ。
妻ちゃん「なに?結婚する相手、間違ってたってか?」
……そう来たか。
「結婚する相手、間違ってたってか?」事件
一瞬、固まった。
僕の中では「いいこと言ったぞ」モードで構えていたから、
まさかそこから「結婚相手間違ってた」みたいな最悪ケースに着地するとは思っていなかった。
でも、よく考えたら妻ちゃんの返しは、いつもこの方向から飛んでくる。
僕がプラス側で球を投げると、
妻ちゃんはマイナス側でキャッチしてから返してくる。
それも、けっこうな速度で。
「独特な雰囲気」というワードを、
一度ぐるっと処理して、最悪のパターンを引き当ててから言葉にしている。
その間、たぶん0.5秒もない。
すごい速さで、すごい角度から飛んでくる。
妻ちゃんの「でも」は、いつもこの角度から
思い返してみると、こういう斜め上返しは日常茶飯事だ。
僕「明日いい天気らしいよ」
妻ちゃん「でも黄砂ひどいって言ってたよ」
僕「この週末、ちょっと出かける?」
妻ちゃん「でも人多いんじゃない?」
僕「この前のスーパー、安かったからまた行こうか」
妻ちゃん「でもあそこレジ混むよね」
僕「このドラマおもしろそうだね」
妻ちゃん「でも前も似たやつ途中で観るのやめてたよね」
会話に自然に差し込まれる「でも」。
正直に言えば、付き合い始めの頃は、ちょっとモヤッとしていた。
明るいトーンで投げた球を、
なぜわざわざ曇らせて返してくるのか。
否定されている気もしたし、
テンポを崩される感じもあった。
でも最近は、不思議と嫌じゃない。
むしろ「またか」と思いながら、
どこかで安心している自分がいる。
0.5秒で起きていること
妻ちゃんの頭の中で、あの一瞬に何が起きているのか。
本人に聞いたわけじゃないから想像でしかないけど、
たぶんこんな感じだと思う。
- ワードをキャッチする(「独特」)
- 意味を分解する(良い?悪い?)
- 過去の記憶と照合する
- 最悪ケースを想定する
- 先回りして言葉にする
これを、0.5秒でやっている。
僕の脳みそだったら、たぶん
「お、褒められた。ありがとう」で終わっている。
でも妻ちゃんは、その手前で何重にもチェックを入れている。
最初の頃は「考えすぎ」と思っていた。
でも今は違う見方をしている。
これは、考えすぎじゃなくて、
解像度の違いなんじゃないかと。
マイナス思考の天才は、リスクヘッジの天才だった
ここまで考えて、ふと浮かんだ。
妻ちゃんは、マイナス思考の天才なんじゃなくて、
リスクヘッジの天才なんじゃないか。
同じ行動でも、ラベルを変えるだけで見え方が変わる。
- 「否定から入る人」じゃなくて、「想定外に先に気づいてくれる人」
- 「めんどくさい人」じゃなくて、「慎重で堅実な人」
- 「ネガティブな人」じゃなくて、「一緒にいると安心できる人」
- 「会話のテンポを乱す人」じゃなくて、「見落としを拾ってくれる人」
書いてみて、自分でもちょっと驚いた。
全部、同じことを言っている。
ただ言葉を変えただけ。
でも、この見方のほうが、しっくりくる。
夫婦は、思考の役割分担なのかもしれない
僕は、どちらかと言えば推進タイプ。
「とりあえずやってみよう」
「なんとかなるでしょ」
進むのは速い。でも、見落としも多い。
妻ちゃんは、リスクヘッジタイプ。
「でも」「もしかして」「念のため」
進むのは少し遅い。でも、致命傷を回避してくれる。
このふたつ、どちらかだけだと、たぶんしんどい。
ふたりで一組になって、
ちょうどいい速度になっている気がする。
あとがき
妻ちゃんの「でも」は、これからもきっと飛んでくる。
以前の僕なら「またか」と思っていた。
でも今は、少しだけ違う。
「ありがとう」と受け取れるようになった気がする。
すべての人に当てはまるわけじゃないけれど、
もし身近に「マイナス思考だな」と感じる人がいたら、
それを「リスクヘッジ」と読み替えてみると、
見え方が少し変わるかもしれません。
その人は、あなたが見ていない角度から、
暮らしを守ってくれているのかもしれない。
このブログでは、HSP気質の妻ちゃんと暮らす中で気づいたことを、
これから少しずつ「妻ちゃん観察ノート」として残していこうと思う。
今日の気づきも、その一冊目。

